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:::Nebula†Garden…ホガラカDiary:::

◆トロケルジカン-after-


【二次創作書庫…ikki*shun】

...トロケルジカン-after-...ikki*shun


 「それじゃあ、学校行ってる間に発つんだね…。」
 鮮やかな新緑を揺らす楠木の上から、僕は不満を投げ落とした。
 「仕方ないだろう。」
 首にかけたタオルで筋トレ後の汗を拭いながら、兄さんはぶっきらぼうにそう答える。
 大樹の木陰で初夏の爽風に吹かれ心地良さげなのが気に入らない。
 この人は、僕が淋しい100分の1だって淋しさを感じていないのだ…。
 僕は、兄さんとの間に髪の毛一本だけの隙間を空けて新緑に埋もれた太い枝から飛び降りた。
 「怒るな…。」  ピクリともせずに見下ろす視線はいつも優しくて、卑怯だと思った。
 「学校サボって空港までいこうかな…。」
 「どっちにしろ俺は行くんだから意味が無いな。」
 「じゃあ、着いて行く。」
 「莫迦言うな…平和な時はちゃんと勉強してろ。将来、働く所がなくなるぞ。」
 兄さんは自分にもそんな言い訳をして外国に行ってしまう。
 日本にだっていくらでも仕事はあるのに、この人は一所に居ることが出来なくて
 何処かへ行ってしまえる職を選んだ。
 「兄さんが居ない部屋に帰るのは嫌なんだ…。」
 「こっちで働いてたって昼間は居ないぞ。」
 「もうっ!そういう意味じゃない!」
 だったらもう、行ったっきりで帰ってこなけりゃいいんだ。
 「!?」
 兄さんを置いて駆け出そうとしたら不意に手を掴まれ、僕は足を止めた。
 汗ばんだ大きな手に温かい力が籠められ、逆らいがたい抱擁の波が手の平から昇ってくる。
 「必ず帰って来るだろう?」
 「もう帰ってこなくていいよっ!」
 振り払わないと離れてしまうのが余計に辛くなる。
 呆気にとられる兄さんを残して、僕は一人、緑の小波の中を駆け下りて行った。

  駄々をこねたところで状況が変わるわけもなく、翌日、学校の授業が終わって部屋に戻ると、
 そこはやはり‘しん’…と、無機質に静まりかえっていて冷たかった。
 「やりきれない……チョコのヤケ食いしてやる!」
 力任せに冷蔵庫を開けると、中からバラバラと見慣れたパッケージが零れ落ちてきた。
 「何これっ!?」
 小型の冷蔵庫の隙間すら余さずに、同じ包みが「これでもか」と詰め込まれている。
 「…兄さん?………こんなに食べられない…。」
 それに…
 買い占めたチョコを、冷蔵庫の中に不器用に並べ詰めていく兄さんの姿を思うと
 相当に格好悪くて可笑しかった。
 しょうがないなぁ…これ食べ終わるまでに帰って来たら…

 「許してあげようかな。」

 =ENDE=

[2006/07/18]...by.che*myun



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